ローマン・ストームと暗号資産のプライバシー戦争
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ローマン・ストームと暗号資産プライバシーへの挑戦
ロシアから革命へ
ローマン・ストームの物語は、崩壊したソ連後期のチェリャビンスクで始まる。食料不足の中、親がパソコンを購入したことで彼は自らプログラミングを学び始めた。19歳でアメリカへ渡り、シリコンバレーへの夢を追った。2017年にはICOブーム期にソリディティ言語の専門家となり、POAネットワークを構築。しかし真に彼を定義したのは2019年の『Tornado Cash』だ。
プライバシーのジレンマ
Tornado Cashは単なるマッシャーではなく、「非預かり型」「信頼不要」「停止不能」を実現した画期的ツールだった。ゼロ知識証明により送金元と受領先を完全に分離し、人権や尊厳のある匿名性を提供した。しかし2022年、北朝鮮Lazarusグループが4億5,500万ドル分を使用したことで、規制当局はこれを「悪用された武器」と見なすようになった。
米財務省による異例のコード制裁――Tornado Cashとのやり取り自体が違法化された。これが示すのは、「停止できない技術を作れば、その開発者が個人として抹消される可能性がある」という恐るべき前例だ。
裁判が変える未来
ストームには3つの告訴罪がある:
- 資金洗浄共謀罪(20年)
- 無許可資金送金業運営(5年)
- 制裁違反(20年)
彼の防衛戦略は「自分がコントロールしていないソフトウェアに対して共謀できるか?」という根本的な問いかけにある。検察側は「利用者の悪用を見過ごした」と主張する一方、支持者は「オープンソースツールを監視させればイノベーションは死滅する」と反論している。
クリプトコミュニティからの支援も広がっている:
- イーサリアム財団が50万ドル支援
- ヴィタリク・ブテリンが50ETH寄付+プライバシーは当然だと声明
- Paradigmが裁判所提出書類で「TCP/IP発明者たち逮捕と同じ」と比喩している。
暗号資産を超えて重要になる理由
この事件は一人の開発者の問題ではない。中立的なインフラが存在できるか?その創作者が第三者による悪用に対して責任を持つべきか?もしプライバシートールを開発することが犯罪となるなら、次に来る Encryption禁止も決して遠くない。
判決によって問われるべき問い:
- 金融プライバシーとは権利か? それとも特権か?
- コードを書くことは言論自由なのか? それとも共謀か?
- イノベーターが刑務所に行く危険があるなら、アメリカはどうして革新拠点であり続けられるのか? スタームの一言:「これは私の終わりではない――私たち全員にとってが始まりなのだ」。
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